「むすんでひらいて手を打とう」
白井らしいポップ・ミュージックだね。これはソフト使ったのか、自分で歌ったのか定かではないな。全編ハモりたいということで、白井がひとりでハモってる。
「夕暮れのUFO、明け方のJET、真昼のバタフライ」
16ビートのギターのカッティングは白井がやってて、右から聞こえるギターが俺。相当、変な音色で弾いてるんだよね。
ー歌詞が、「UFO」「ジェット」「蝶々」と飛びもの3連発ですね
UFOはよく酒飲みに行く店の21歳のおネエちゃんがブログに書いてたのを見て、「〈西の空にUFO〉、お、いただき!」(笑)。だからスペシャル・サンクスに名前が入れてある。
「本当におしまいの話」
この曲と次の「パラダイスあたりの信号で」は、俺の中では組曲みたいなイメージ。この曲は「物は壊れる、人は死ぬ」みたいな歌詞だよ。隅田川の周辺にいるホームレスを思いながら書いたんだけど、「ゆうがたフレンド」あたりと関連があるような内容になった。サウンド・プロダクションはヴァン・ダイク=パークスの『ヤンキー・リーパー』っぽいな。
「パラダイスあたりの信号で」
ーこのタイトルは、やはり『洲崎パラダイス 赤信号』ですか?
そのとおり。東京と言えば川島雄三でしょう(笑)。最初のタイトルは「パラダイスあたりで」だったんだよ。「信号」は歌詞に入ってなかった。でも、歌詞を書き直してるうちに、これ、川島雄三だろうって感じになってきて。変なところから歌い出す曲にしたかったんだよ。最初は1番は全部インストにして、2番から歌おうと思ってたんだけど、1番の途中からのほうが変だろうなと思って、でもそこからだとあまりにも歌詞が短くて(笑)、言うべきことが言いきれないので手前に入れて。さらにエンディングの「パラダイスあたりの〜」というところは別の曲のサビだったんだけど、2曲一緒にしちゃった。
「旅のYokan」
これ、最初の頃からデモテープであって「いい曲だなあ」と思ってて。配信の6曲からは外れたけどね。で、再び浮上した。弦はまたくじらオーケストラなんだけど、この弦が素晴らしい。マーラーのようだね。要するに、メロディーで何かを弾くのではなくて和音でもっていく。まさに『ベニスに死す』じゃん(笑)。俺は「シップビルディング」と呼んでいたけど。
「6つの来し方行く末」
これは4月のツアー以降の最初のセッションの頃に録音して、ずっと放ったらかしになってたんだけど、レコーディングの最後のほうにやっぱり入れようということになった。俺と白井のギター、くじらのマンドリンでループを作って、それが流れていくアコースティックなサウンドになっている。ループで続いてんだけどメロディーは一個しかないんだよ。『カメラ=万年筆』の「大都会交響楽」みたいだね。
ー全員がヴォーカルをとっていますね。
アルバムがある程度出来上がってきた時、自分のヴォーカルが多すぎるような気がして、少しずつ他のメンバーの声を入れたんだよ。それで最後の曲は一番ずつみんなで歌うことにしようと。それぞれ生まれた月の歌詞を歌ってる。俺は8月、かしぶちが10月、くじらが12月、白井が2月、岡田君4月、鈴木博文5月、で終わる。
ー全員、月も季節もバラバラで良かったですね。
奇跡的にバラバラ(笑)。で、歌詞を書いている時に、その人のキャラクターをちょっとは浮かび上がらせたいなと。しかしネガティブなところは浮かび上がらせたくない(笑)。じゃあ、美しく歌って頂きたいな、という歌詞にしたつもりなんですけどね。
ー「タブラ・ラサ」と対応するような歌詞ですね。
バンドが解散するとか、ロックは若いもんのものだみたいな、そういう曲でスタートして、最後はみんなで歌って終わるというね。それが今回のアルバムの外枠になってる。
ーしかも、循環するメロディーになっているから、「この後も、ずっとバンドは続いていく」みたいな予感を匂わせたりもして。
そう、いつまでもね(笑)。
<取材・文>村尾泰郎
『ヤンキー・リーパー』
ヴァン・ダイク=パークス。(1975年作品)アメリカン・ルーツ・ミュージックの土埃とカリブの風が混じり合ったエキゾチックな名盤。
『洲崎パラダイス 赤信号』
(監督 川島雄三 56年)。東京・州崎遊郭を舞台にした人間ドラマで、遊郭に繋がる「橋」が映画に効果的に登場する。川島監督自身、もっともお気に入りだった作品。
『ベニスに死す』
(監督/脚本 ルキノ・ヴィスコンティ 71年)。サントラに19世紀の作曲家グスタフ・マーラーの「交響曲第5番」が使用された。
「シップビルディング」
ロバート・ワイアットが82年に発表したシングル曲。作詞はクライヴ・ランガー(デフ・スクール)で作曲はエルヴィス・コステロ。