「タブラ・ラサ ~ when rock was young」


メロディーだけ取り出すと非常にかしぶちさん的なんだけど、歌い方は(ボブ・)ディランでやってくれと言われたんだよ(笑)。「ディランかあ、最新作のディランだと、ほんとに恐いぐらいの声だよ」って。そこまではできないけど、それぐらいのラフな気持ちで歌ってみようと。でも、この曲は白井のギターのリフが決め手になってると思うんだよね。コードともブツかるようなヘンテコなフレーズを弾いていて、そこにメロダインというソフトでハーモニーを付けていった。「なんだ、これ? これまで聴いたことないな」ていうのを1曲目にもってきたかったんだ。あと、俺としてはイントロのギターを弾けたことが嬉しい(笑)。ムーンライダーズの曲でイントロを弾いたのは、これが初めてなんだよ。白井がいない時に「かしぶちさん、イントロに何か入れたいよね、これどう?」とか言って弾いたんだ。


「SO RE ZO RE」


ーこの曲は「タブラ・ラサ」とは逆に明快なギターで始まりますね。


こういう感じのもこれまでなかったでしょ? ギャギャーンなんてのは。これも岡田君のギターのソフトがあって、それを中心にして、それの上にどんどんギターを被せていった。ギターがすごく重要なアルバムになると思ったんだ。1曲目のイントロも生ギターでしょ、2曲目もギターでしょ。ギターのイントロで出る、っていう曲がけっこうアルバムの前半にあって。次の曲もそうだよね。


「 I hate you and I love you」


これは相当、後にできた曲だね。今回のアルバムはミディアム・テンポの曲が多くなってきたから、アップ・テンポのものも入れなきゃ、と。ダーン!とハモるとこは「お、フリート・フォクシーズ!」とか言ったりして(笑)。


ーラストで展開がガラッと変わりますね。


そのパートは最初は曲の真ん中にあったんだよ。展開が強引なというか、エディットされたような曲を作りたかった。でも白井が「真ん中にあると転びそうになるから、最後のほうがいいんじゃない?」って言ってきて、それで最後に持ってきた。


ーそんな風に意見が割れた場合は、どうやって決めるんですか?


白井の意見を聞くよ。このケースは自分を強く出す場合ではない。他人が「こうしたほうがいいんじゃない?」ってときは、80%聞くね。その他のスタッフの意見も含めて、なにか言われたときは、けっこう言うこときいてるんだ、俺(笑)。


「笑門来福?」


ー『青空百景』でいくと「トンピクレンッ子」みたいにイキの良い曲ですね。「富士山」も出てくるし。


江戸前だね。江戸前だし、オインゴ・ボインゴみたいな感じもする。非常にテンポの速い歌詞なので舌噛みそうになるけど(笑)。実は今回、白井以外にも江戸前な曲がすごく多かったんだ。「東京」ってのをぶつぶつ1年も言ってるとさ、江戸前な曲を皆さん作ってきたりするのよ。「浅草」って呼んでる曲もあったりして。ほんとにベタな、尺八みたいなのが入ってるような曲(笑)。それは今回、迷ってやめたけど。


「Rainbow Zombie Blues」


録音中にギター2本を同時に弾いたんだけど、最初は白井がブルースなギターを弾いて、俺がニュー・ウェイヴっぽく「ガガガッ、ガガガッ」てやってたら、すごくぶつかるんだよ。それをちょっと変更しつつ2本が絡み、というのはうまくできたかなと。問題は歌だよ、ブルースっぽく歌うのかどうか。いろいろ考えた末に囁くように歌ってみた。いろいろ違う歌い方で同じメロディーを歌って、それを加工したんだけど、違う声がユニゾンで塊になって入っている、というのは今回のテーマだったね。いろんな声で、あるいは多くの人間で囁くように歌うと、いろんな声が聞こえてきて面白いんだよ。「これ、誰が歌ってんだろう?」ってね。


「Small Box」


クルーナー・ヴォイスでカントリー・フレイヴァーな曲を1曲入れたいなと思って作ったら、岡田くんが「これはレイ・チャールズみたいでいいよ」って言うんで、じゃあ、レイ・チャールズ的に歌おうって。くじらオーケストラが大活躍で、1人で手で何10本も弦を入れてましたね。


ーこの「箱」のイメージはどこから?


なんでしょう? 私もよくわからない。『オルフェの遺言』のコクトーが持ってた箱かな。でも、あれは銃弾が入ってるんだよね。もしくは、『マルホランド・ドライブ』の青い箱。タイム・カプセルなのかもしれないし、何か大事なものを入れていたものなのかもしれないし……。非常に抽象性のある、ひとつのメタファーとしての箱でいこうと。なんか大事なんだろうな、この箱って。


「ケンタウルスの海」


ーこの曲もギターのエフェクトが印象的ですね。サウンドもポスト・ロック以降な感じがします。


くじらの曲って、わりとシンプルなものが多いんだよ。でも、すごい意外性のある発展をしたりする。いちばんヘッド・アレンジのやり甲斐があるんだよな。だから気が付くと最新のサウンドになってたりして。この曲は俺と白井の生ギターをループさせているんだけど、白井は小節の頭でコード弾くだけで、それをエフェクトで引き延ばしてて。で、見事なところでグロッケンシュピールが入る。レコーディングしたスタジオは楽器のレンタルもしてるから、楽器が豊富にあるんだ。ユーフォニウムなんかも初めて使いました。くじらにはゲイっぽく歌ってもらったんだよ(笑)、アントニー&ザ・ジョンソンズみたいに。旋律は無理しても、オクターブ上で歌った方が良いからってね。


































フリート・フォクシーズ

06年にデビューしたアメリカのバンド。生楽器のアンサンブルと多彩なコーラス・ワークが特徴で、ファースト・アルバム『フリート・フォクシーズ』(08)が高い評価を受ける。













オインゴ・ボインゴ

70年代末からLAで活躍した8人組ニュー・ウェイヴ・バンド。95年に解散したが、中心人物のダニー・エルフマンは映画音楽の作曲家として活躍中。












『オルフェの遺言』

(監督/脚本/出演 ジャン・コクトー 60年)



『マルホランド・ドライブ』

(監督/脚本デヴィッド・リンチ・リンチ 01年)








アントニー&ザ・ジョンソンズ

00年にデビュー、現在のNYシーンで大きな注目を集めるバンドのひとつ。ヴォーカルのアントニーはトランスセクシュアルで、その歌声はルー・リードいわく「初めて彼の歌声を聴いたとき、私は自分が天使の前にいるのだとわかった」。天使 vs ケンタウルス!